この度浄土寺は、開山五百年平成大改修を終え、メディア等を通じて広く人々の注目を集めています。
 今回大改修を行うことになった直接の理由は、近年の地盤沈下によって建物が傷み、危険な状態になったからです。浄土寺が位置する場所は地盤が弱く、本堂や庫裏が地盤沈下の影響を受けていました。そこで、本堂および庫裏、来迎殿などを建立当時の姿に戻すことを目的に工事を行うこととなりました。
 本堂は江戸時代の嘉永2年(1849年)に建立された入母屋造り。一方、庫裏は臼杵城の書院を明和6年(1769年)に移築したもの。ともに平成20年(2008年)に、国の登録有形文化財に指定されている貴重な建物です。
 修復にあたっては柱や屋根などの古材を残し、昔ながらの手法を使って古くから伝わる歴史遺産を護ることを主眼とし、同時に、地盤の弱さを克服するため、耐震のための最新技術を導入する事となりました。今後100年間は、大きな工事を必要としないで済む堅牢な造りとしました。
 浄土寺では、本堂や庫裏などの大改修だけにとどまらず、これを契機として500年後、1000年後の西大分地区の文化遺産となることを願って、浄土曼荼羅や截金芸術などの文化的芸術作品を制作、収蔵しました。
 浄土曼荼羅の制作を依頼したのは山口県宇部市の日本画家、馬場良司さん。馬場さんは京都の醐醍寺や平等院などの国宝復元に携わった経験を持っていて、浄土教が説く極楽浄土の世界を描き出しました。
 一方、截金芸術に携わったのは佐賀県在住の截金師・小林尚子さん。截金とは金箔を細く直線状に切ったものを、筆と接着剤を用いて貼ることによって荘厳な文様を表現する金箔芸術のことで、飛鳥時代に大陸から仏像彫刻や仏画とともに日本に伝わったといわれています。
 さらに京都から阿弥陀三尊像をお迎えし、「極楽浄土胎蔵界」を後述する八角三重塔に再現しています。

古い柱や屋根等の古材を残し、昔ながらの手法を用いると同時に、建物及び地下5メートルには
耐震のための最新技術を投入するなど、文化財として後世に残る改修となっています。

浄土曼陀羅
数々の国宝修復にも携わる日本画家・馬場良司氏

截金芸術 截金師・小林尚子氏
来迎殿には、日本の伝統工芸「截金」作品も施されています